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古代中国語の上古音には,kl-など語頭の二重子音(複声母)があった。タイ諸語や日本語の読み方と比較するとわかる

古代中国語には,二重子音があった。

そう言える根拠や,音の推定方法を見てみよう。

古代中国語には「上古音」が存在する

いまでもタイ語などには「クラップ」のような二重子音が生きているが,

言語学を駆使して西暦前の漢語を復元すると,中国語にも同じように二重子音があったことがわかる。


そのころの中国語を上古という。

上古の読み方で詩を朗読した動画があり,そこでは kl- の音が多数出てくる。

《關雎》上古漢語朗讀 Kroon Shyaa leiendo en chino antiguo - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Bqt3_...

  • 2009/07/02 にアップロード, by Jinjing Xu


唐代の人は漢詩をどう詠んだか―中国音韻学への誘い : 香炉待薫記
http://xiaoq.exblog.jp/10648353/

  • もっとスゴイのは詩経の上古漢語朗読です。これは・・・イスラム語かと思った・・・
  • そういえば二重子音については『中国の諸言語―歴史と現況』とかにも書いてありましたが、実際に聞くと衝撃的です。 《關雎》は「レッドクリフ」で関羽が子供たちに教えてた詩ですね、映画では現代中国語でしたが


中国語の二重子音についての学説の論文:

長田夏樹紹介書評101208_38 - joukoon-furuya.pdf
http://www.for.aichi-pu.ac.jp/museum/...

  • 上古音に存在したであろうと想定される語頭重子音(語頭複子音、現在は多く「複声母」 と呼ばれる)について、タイ諸語との比較


マスペロ「上古中国語の接頭辞と派生」
http://www.waseda.jp/wias/achievement...

  • pl,kl,bl,glなどといったグループは,後にl,mなどの脱落によって接頭辞のみが残存することとなった。すなわち*p-li>piのように。

上古音を推測する方法

この「上古の語頭複子音」の存在を唱えたことで有名なのは,スウェーデンのカールグレンという学者だ。


むかしの中国語に語頭複子音があったことは,タイ諸語のみならず,日本語を見てもわかる。

同じような漢字を「カ行」で読むものと「ラ行」で読むものが混在しているので,もとは一つだった,つまり kl- という音だったとわかるのだ。

「楽」という漢字を,ガク・ラクと2通りの読み方で読むのも,同様にもともとは一つの gl- という二重子音だったことの推定の根拠となる。

日本語千夜一話 小林昭美-127
http://www3.ocn.ne.jp/~ocra/127.html

  • 古代中国語には[kl-]、[pl-]、[ml-]、[hm-]などの複合子音が語頭にあった可能性がある。  スウェーデンの言語学者Bernhard Karlgrenは古代中国語は語頭に複子母音があったのではないか と指摘している。
  • 確かに日本語の漢字には同じ声符をラ行で読むものとカ行で読むものなどが混在してい る。   洛(ラク)・挌(カク)、 藍(ラン)・監(カン)、 簾(レン)・兼(ケン)、  嵐(ラン)・風(フウ)、 陸(リク)・睦(ムツ)、 黙(モク)・黒(コク)


日本語千夜一夜 小林昭美-056
http://www3.ocn.ne.jp/~ocra/056.html

  • 日本語では子音が連続することはないので、中国語の複合子音は単子音に変化する
  • たとえば、 「諌」と「練」は同じ声符「柬」だが、カ行とラ行とに読み分けられている。 例:諌(カン)・練(レン)、 果(カ)・裸(ラ)、 檻(カン)・藍(ラン)、    兼(ケン)・簾(レン)、 格(カク)・洛(ラク)、京(キョウ)・涼(リョウ)、   
  • カールグレンは、これらの漢字の古代中国語音は[kl-] あるいは[gl-] だったと考えている。古代中国語音で諌[klean]・練[klian]であったものが後に、諌(カン)と練(レン)に分かれた。
  • このような漢字がいくつもあることは、古代中国語に[kl-] という子音の連続があったと考えれば説明がつく。日本語にはもともと語頭で子音が連続することがなかった。


中国語音韻学のメモ
http://www.geocities.jp/cato1963/chin...

  • 上古音の復元の例・・・洛、落、酪、絡、烙は「ラク(lak)」。客、格、閣は「カク(kak)」。
  • それぞれの漢字の音符「各」の上古音は「クラック(klak)」だったが、語頭の二重子音[kl-]のうち、時代がくだるにつれてkが脱落した発音が「ラク(lak)」となり、 lが脱落した発音が「カク(kak)」となった、と推定すると、きれいに説明できる。


中国語は母音が決め手
http://www.ne.jp/asahi/yikai/class/ha...

  • 【語頭子音には英語の「clock」のような二重(複)子音があった】
  • 漢語固有の単語であるにもかかわらず,その物事を表す専用の字を二つ使う2音節単語が漢語にはある。  その例が多く見つかる/kl-/型では,「kuĭlĕi(傀儡:カイライ,あやつり人形)」, 「gōulóu(佝僂:クル,せむし)」など日本語のカナ漢字変換で出て来る単語もある。
  • これらは現代中国語でも2文字で使うのが普通である。  2文字化は,戦国秦漢時代になって中国の版図が拡がり,二重子音の発音が出来ない人が増えた結果, 日本に持ち込まれた入声音と同じように,2音節(2文字)化することで, 概念と字がまとまって生き延びた
  • このような二重子音の一つに/ŋl-/があったと考えられている。 /ŋlak/(楽)は/-k/韻尾の音である。 この字は上古では今の「音楽」と「快楽」の両方の意味を持っていたが, 二つの意味に二重子音の前後の音を振り分けることで,1音節のまま生き延びた。 詩経ではどちらの意味でも同じ韻を踏んでいるが, 唐詩では日本漢音の/ŋak/:「ガク」と/lak/:「ラク」で分かるように,発音で意味が別れている。  北京方言ではこの二つの発音は,/ŋ-/が母音化した拗音介母の影響があり, 別々に音韻変化をして「yuè」と「lè」になっている


「漢字を手放さなかった日本語(後編)」沖森卓也(2)|インタビュー Vol.17|超漢字マガジン 漢字を知り漢字を楽しむサイト
http://www.chokanji.com/magazine/inte...

  • 「kl」っていう頭子音があって、現在の英語でも「クリーン」のように「cl」とか「cr」で書かれるスペリングはそう珍しいものでもありません
  • 中国語も昔「ラク」や「カク」というのは二重子音で「クラック(klak)」というような音だったのが、一方では「ラク(lak)」になりもう一方では「カク(kak)」になったと。こういうことが見えてくる
  • タイ語には二重子音で「kl-」という発音が存在してるんです。中国語にも二重子音、場合によっては三重子音もあったという説もあります。今では子音は一つだけですけどね


中国語 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%A...

  • 古代漢語:声母(頭子音)に複子音 sl-, pl-, kl-(例: 「監」*klam) などが存在した。

二重子音には十分な根拠があるが,反論もある

二重子音は,別に珍しいものではない。

中国と縁のあったインドからも,サンスクリット語を通じてさまざまな言葉が輸入されたのだから。

その際,インドにあった二重子音を,中国でも問題なく扱うことができていた。

しかし後になって二重子音は消滅した。

漢民族滅亡論2
http://www.ac.cyberhome.ne.jp/~k-seri...

  • 漢当時はサンスクリットのbrahmaは音訳を使って漢字で「梵」と表記されるという。だから当時は「梵」の発音はbramという二重子音で読んだ。漢字の読みにも二重子音があった
  • ところが隋王朝で編纂された「切韻」という漢字の発音辞典では二重子音がなくなっている


十二国記の世界を分析する (数学ネタ123)
http://homepage3.nifty.com/kouhei1016...

  • 上古音 → 中古音 → 近世音 → 現代北京語 という順で変化
  • 第1の変化(上古音 → 中古音)では、二重子音が消滅して単子音になり、有声の入声が脱落したらしい。 例えば、「klak」のような音が「lak」「kak」のような音に変化したり、「hog」→「ho」のような変化が起きた


中国語の漢字の古代の発音は現在とは全く違いますか? - かなり違いますが、まったく...
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/...

  • 上古から中古にかけて、有声の入声(-d, -g, -b, -r の音節末子音)が消滅
  • 同時に語頭にあった pla- mla-, kla- などの二重子音も消滅します。これは、南北朝から五代十国にかけて、北方から侵入した匈奴、鮮卑などの遊牧民のアルタイ系言語の影響だと考えられています


もちろん昔の音を復元する作業なので,絶対ではないから,二重子音を否定する見解もある。

上古音 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8...

  • 有重子音説 カールグレンは『分析字典』(1925年)においてkl・glという二重子音があったという説を唱え、後の『漢文典』(grammata serica、1940年)ではさらに19種の重子音を想定している。王力などはこれを否定している。


cc004027.pdf
http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.j...

  • *r,*1を用いることなく上古音を再構することもまた可能であると言わなければならない。

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